チベット文化、四川料理、ときどき旅。

中国四川省で暮らすアラフォーの日々。山々に囲まれた標高2600mの町、カンディン市。バーを営む中国人の夫とその仲間たち。息子と犬。辛い食べ物と大自然。たまに旅。日々の様子を綴っています。

テレビ

 近年、中国でもテレビを見る人は減るばかりだ。例に漏れず大人も子供もスマホに釘付けである。

 

 テレビで得られる情報は限られている。100以上あるチャンネル数の割に内容が薄いエンタメや、戦争モノの大河ドラマが繰り返し流れるばかりで需要もない。

 中国では各チャンネルで放送される項目がビシリと決まっている。CCTV1は総合チャンネル、2は経済と産業、4は国際、7は軍事。我が家でよく見るのは、5のスポーツ、9のドキュメンタリーと13のニュース。各チャンネルが新しい内容と再放送を順繰りに24時間放送している。

 5のスポーツは、世界大会で戦う中国選手の様子をメインに、サッカーなど人気の種目はヨーロッパの試合も随時流れる。13は国内外の最新ニュース、特に面白いのが9のドキュメンタリーで、野生動物や海洋生物の生態、中国各地方の美食、建築、歴史など多岐にわたるドキュメンタリーが見放題だ。

 

 『舌尖上的中国(舌で味わう中国)』という番組は見応えがある。国内に数百と散らばるローカルグルメを文化と共に紹介する10年続く長寿番組だ。

 石釜と薪を使い伝統的手法で焼く北京ダック。皇帝に出されていた料理はもはや芸術だ。よくあるオーブンで焼いた北京ダックとは別格である。滴る脂に唾を飲む。

 貴州の静かな農村、村人総出で収穫した唐辛子を惜しみなくザクザクと刻み、薬味と和えてタレを作る。肉や野菜をくぐらせて炊き立ての白飯に乗せ、頬張る口元にアングルが寄る。思わず自分も口が開く。

 テレビの中の美味しい中国を見ながら、“次の大型休みはアレを食べにドコへ行こうか。”夫と一緒に想像を膨らませ、もう旅に出たつもりで我が家の質素な飯をかきこむ。

 

 テレビ番組とは別に、通信会社がテレビを通して動画配信サービスも提供していて、映画やアニメも有料無料と盛り沢山である。

 日本にいた頃は、年に数本見るか見ないかであったが、こちらに来て映画を見るようになった。その理由が“無料”である。

 中国では新旧ほぼ全ての映画やドラマを無料で鑑賞できる。いわゆる違法アップロードが野放し状態なのだ。いや、訂正する。消しても消しても、アリが湧くように再アップロードされ、取り締まる術がない。まさか無理だろう、と最新の海外ドラマを検索すると必ずヒットするし、名前も知らぬ日本のアニメの感想を聞かれるのは日常茶飯事だ。

 

 中国人の映画好きはフランス人以上ではないか、とどちらにも偏見がある持論を方方で口にしている。

 政治への思想と言論が規制されている分、人の欲望は娯楽の方向へまっしぐら。美味いものを食べ、面白い映画を観て、今日も大満足で床に入る。自由だ独立だと大声で主張するのが無粋に思えてくる。

 プロパガンダ大成功ではないか、とご指摘をいただくかもしれないが、世界のパトロンである中国人が娯楽を貪るというのは、地球の未来にとって明るいのではないか、とまた酔狂な持論をここにも書かせていただく。